2013年07月12日

連れ子との養子縁組

鶴子さん26歳は2人の娘、鶴美ちゃん3歳、鶴花ちゃん1歳、を連れて、
再婚することになりました。お相手は42歳の既婚歴なしの男性です。
ナインティナインの御見合い番組で、よくありそうなパターンです。
簡単な式を挙げ、鶴子さんは入籍を済ませ、4人で仲良く暮らします。
ところが半年後、再婚相手の男性が突然亡くなってしまいます。

さて、月額にして10万円を超える遺族基礎年金は鶴子さんに支給されるでしょうか。
もし、2人の娘と再婚相手との間に、養子縁組の手続きがされていなかったのなら、
遺族基礎年金が支給されることはありません。
養子縁組の手続きをしておかないと、悲しみの涙が倍に増えてしまいます。


遺族基礎年金の支給を簡単に言うと、亡くなった被保険者に養われていた、
亡くなった被保険者の子がいる妻、あるいは亡くなった被保険者の子です。
(平成26年4月からは、亡くなった被保険者の子がいる夫も加わります)
亡くなった被保険者に子がなかったのなら、遺族基礎年金の支給はありません。


では逆のパターンです。龍子さん32歳が亀男さん35歳と結婚したとします。
亀男さん前妻とは死別で、亀太郎くん9歳と亀次郎くん6歳の2人の子がいます。
入籍後、子どもたち2人とも、良くなついてくれて、4人で楽しく暮らすのですが、
ある日、亀男さんが交通事故で亡くなってしまいます。

さて、月額にして10万円を超える遺族基礎年金は龍子さんに支給されるでしょうか。
この場合は養子縁組の手続きをしていなくても遺族基礎年金は支給されます。
もちろん、今後も亀太郎くんと亀次郎くんの面倒を見ることが前提になります。


マトメ。 自分の入籍ばかりで、子の養子縁組をするのを忘れていた場合、
@ (A男)と(B子・子)の場合でA男が亡くなったら、遺族基礎年金は支給されない。
A (A男・子)と(B子)の場合でA男が亡くなったら、遺族基礎年金は支給される。

この場での目線は死亡したA男です。
@の場合は、A男から見て妻はいますが、A男自身には子はいません。
妻に子はいたかもしれないが、亡くなった被保険者に子はいなかった、とされます。
対してAの場合は、被保険者であるA男から見て、子がいます。妻もいます。


さて、残された亀太郎くんと亀次郎くんを、今まで通り面倒を見る龍子さん。
遺族基礎年金は支給されたけど養子縁組をしておかないと戸籍上親子とは言えません。
亀男さんの死後に、残された子どもたちと、していなかった養子縁組をしたらどうなるか。
養子縁組は相手を間違えると失権しますので慎重にしなければなりません。

私、今まで遺族基礎年金のテキストで理解できなかった箇所がありました。
「子が、妻以外の者の養子となったとき」 テキストに書かれてあったのですが、
何を言ってるのかサッパリでした。妻以外の養子と書いてあるけど、じゃあ、
「妻の養子になる」ってどういうことだ? どういう状況がそこにあるんだ?

目からウロコです。
亡くなった亀男さんの妻が、亀男さんの子どもたちと養子縁組することだったんです。
「子が妻の養子になる」まさに、このことを指していたんです。
もちろん、減額も支給停止もなく、変わりなく遺族基礎年金は支給されます。


今度は正式に母となってくれた優しい龍子母さんが、亡くなってしまったら。
亀太郎くんと亀次郎くんに遺族基礎年金が支給されることになります。
子ども2人だけでは生活できませんので、
亀男さんのおジイちゃん、おバアちゃんに引き取られることになります。
この状況でも、2人には月額で8万4千円ほどの遺族基礎年金が支給されます。

おジイちゃん、おバアちゃんからしても、決して楽な年金生活ではありませんから、
2人がもらうことができる遺族基礎年金は、それなりに増える家計を助けてくれます。
おジイちゃん、時間はあるので遺族基礎年金を調べて勉強するわけです。
「なになに、直系血族との養子縁組なら遺族基礎年金は失権しない、か。
ワシたちは亡き息子亀男の親なんだから、まぎれもなく直系血族だよな。
なになに、生計を同じくするその子の父もしくは母があるときは支給を停止する、か。
父、母は死んじまったよ。ワシたちはジイちゃん、バアちゃんだから関係ないな」

一通り調べ終え、今後の2人の子どもたちのことを考えたうえで、
亀太郎くんと亀次郎くんと養子縁組することを決めます。

さて、養子縁組の手続きを終えたあと、遺族基礎年金の振り込みが滞ります。
おジイちゃんがしびれを切らして、年金事務所に電話でその理由を尋ねると、
「養子縁組をされたということで、あなた様方、おジイちゃんとおバアちゃんのお2人が、
亀太郎くんと亀次郎くんの正式な父親、母親となったわけです。という理由から、
生計を同じくするその子の父もしくは母があるときは支給停止、となったわけです」

ジイちゃん、バアちゃんと養子縁組すると、今までのジイちゃん、バアちゃんは、
父ちゃん、母ちゃんに変わるって盲点のような気がしませんか?


子が遺族基礎年金を受給することになった場合ですが、
【生計を同じくする、その子の父もしくは母があるとき、その間は支給停止】
母親が亡くなったら、子に遺族基礎年金が支給されますが、
父親と一緒に暮らすのが一般的であり、その場合は支給停止となります。
父親が亡くなったら、本来、子のある妻、つまり母親に年金が支給されますが、
母親が収入要件で受給権を得ない場合、子に遺族基礎年金が支給されます。
しかし、母と一緒に暮らすでしょうから、その場合も支給停止となります。
要は、遺族基礎年金を支給しなくても大丈夫でしょう、という状況です。
※平成26年4月に改正されるかもしれません。
posted by 貞吉 at 00:11| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年07月08日

交差点での事故

ぼうーっとしながらの運転が、いかに危険なものかを身をもって知りました。
交差点の信号が赤になったので、車を停止させ待っていたのですが、
私が待たされている信号のすぐ先に、もう1つ信号があったのです。
先の信号も赤でした。私、ぼんやりと先の信号を見ていたんだと思います。
その先の信号が青になったのを見て、待たされている信号がまだ赤のままなのに、
発進してしまったのです。クラクションを鳴らされて事態に気が付いたのですが、
危うく事故を起こすところでした。


さて、20日ほど前になりますが、運転免許証の更新を済ませてきました。
運よくゴールド免許を維持できていたので、講習は30分で済みました。
その中で、交差点での事故の話を聞かされたのでお知らせします。

交差点での事故は、交通事故の4割以上を占めるらしいです。

たとえば、信号のない交差点で、
相手が一時停止義務を無視したか、見落としたかで突っ込んでくる。
普通に前を向いて直進していた車の方はたまったもんじゃありません。
こういった事故の場合、一時停止をせずに突っ込んできた車が全面的に悪い。
誰だってそう思うはずです。
しかし、講習の教官いわく、ぶつけられた方にも、過失責任が生じるらしいんです。
「交差点を直進しようとする場合、左右の安全を確認してから交差点に進入すること」
こういう決まりがあるらしいのです。たとえ本線、優先道路であっても、です。
講習の教官の話は続きます。
「相手に一時停止義務違反があっても、以上言った左右確認を怠ったという過失から、
一般的にぶつけられた方にも3対7か2対8の割合で、責任が生じることになります」
そりゃーたまらん。受講者が多少ざわついたのは、そう思ったからだと思います。

交差点へ入る直前に運転席から体を前に起こし、左右を覗きこむ?
「おっ、あの車、さては突っ込んでくる気だな」
そう思ったら、回避するために、交差点直前で停止する?
そりゃあ無理です。そんなことをしたら渋滞を引き起こすか追突されます。
それに実際のところ、交差点に入らないと左右は見えないはずです。
左右確認を充分に行い、横から突っ込んでくる車を見つける。
………見つけたのはいいとして、その後どうすれば?
事故の検証のときに、警察官に「左右をちゃんと確認しました」と主張しても、
「ちゃんと見ていたのなら事故は起きてないはずです」とか言われるんでしょうね。
そうなってくると打つ手はないじゃないですか。
運が悪かったと諦めるしかないのでしょうか。理不尽な話です。

教官の話はさらに続きます。
「もし、一時停止をせずに突っ込んできた車の運転手がお年寄りで、
この事故により亡くなってしまった場合、事故の責任割合は全く別の話として、
ぶつけられた方が、死亡事故においては加害者という立場になります」
おいおい、それってマジですか? 受講者のどよめきがそう言ってました。


ところでこの教官、我々に何が言いたかったのでしょうか。
なす術のない、対応のしようのない話を持ち出してきたわけです。
「免許証を持って、車の運転をしていてもロクなことはないですよ。
免許証を返上しなさい、バスを使った方がいいですよ」
そう言いたかったのかもしれません。

確かに歩行者から見たら車は凶器です。にも係わらず、
細い脇道から勢い余ってか、車道に飛び出して曲がって行く自転車もあります。
こういうのは半分、自殺思考者だと思うのですが、それでも悪いのは車になります。
運転している限り、ちょっとでも気を緩めると加害者になる立場なのですから、
ぼうーっとしながらの運転、これだけは気をつけるようにしましょう。


ちなみに免許証の写真、予想通りのひどい写真に仕上がっていました。
………5年間ですか。困ったもんです。
posted by 貞吉 at 21:04| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年07月01日

年金 わずか1日の差

(夫)弘さん38歳、(妻)美奈さん35歳、(子)雄大くん6歳、(子)夏奈ちゃん3歳。

よくある家族構成だと思いますが、こういった家庭で、
妻の美奈さんが亡くなった場合、それが来年、平成26年4月以降ならば、
夫に遺族基礎年金が支給されることになりました。
今までは奥さんが死亡した場合、一般的に残されるのはご主人と子になるわけで、
この場合、遺族基礎年金の支給はありませんでした。

妻である皆様方、亡くなるのであれば、その辺のところを心の片隅に留め、
家族のためにも、平成26年4月以降、法律施行日以降にお亡くなりください。
平成26年3月31日死亡と平成26年4月1日死亡では雲泥の差となります。


シーンと静まる病室で医師が懐中電灯で瞳孔を確認します。
「平成26年3月31日、午後11時38分、山田美奈さんご臨終です」
普通なら遺族たちは、ワッと泣き出すところです。
その場にいる、美奈さんの御両親、美奈さんの弟、
そして残された子供たちの雄大くん、夏奈ちゃん。
思いっきり声を出して泣いちゃってもいいんだよ、というその時、
夫の弘さんの一声で、皆が泣くことを制されてしまいます。
「先生、何を言ってるんですか! 妻は、美奈は死んでなんかいません。
バカなことを言わないでください」
「………お気持ちは察します。しかし、心肺および脳の死が確認されましたので」
「妻は、まだ生きてるんです。ほら、ほら、私に今、何か話しかけてきてますよ。
なんだ、美奈、声が小さくて聞きづらいよ、なんだい? なんて言ったんだい?」
弘さんは、美奈さんの口元に自分の耳を近づけます。
美奈さんの言うことが確認できたのか、うん、うん、時折うなずいたりします。
医師は、キョトンとしながら弘さんの行動を見つめます。
「分かったよ。それがおまえの最後の望みなんだな、分かった」
顔を美奈さんから離し、そこにいた美奈さんの弟を向き、言います。
「健治くん、悪いんだが、美奈がイチゴ大福を食べたいと言ってるんだ。
こんな時間だけど、探して、事情を説明して、手に入れてきてもらえないか」
言われた弟の健治さんは、当然うろたえます。しかし、
手にお金を握らされ有無を言わさず、「さぁ急いで」と病室から追い出されます。

時計は午後11時42分を指します。
弘さん以外は医師を含め、皆、呆然です。何が起きているのか理解できません。
泣いていいものやら、あるいは弘さんに問いかけていいものやら、
状況が飲み込めないのですから無理はありません。
弘さんはベッドに横たわる美奈さんの両手をギュッと握りしめ、
「頑張れ、イチゴ大福買ってきてくれるからな、待ってろ、死ぬな、頑張れ」

汗をかいていない美奈さんの額をハンカチで拭いてあげたり、
話しかけられてもいないのに、何やら美奈さんに返事をしたり、
ポカァーンと見つめているだけの他の者が、話しかけてくる隙を与えません。

午後11時58分を指す時計をチラッと見た後、弘さんは看護婦さんに尋ねます。
「この時計、2分くらい遅れてませんか? 私の時計は12時をまわったんですけど」
「………いえ。電子時計なので遅れるはずはないと思います」
「あぁ、そうですか、じゃあ私の時計の方ですね、きっと進んでるんでしょう」
腕時計を付けている右腕を、意味もなくクルクル回したりします。

そして壁にかかった電子時計が0時を過ぎたとき、
「美奈! 美奈! どうした美奈! うわー、美奈!
美奈が平成26年4月1日に死んじゃったよ。美奈ぁー、美奈ぁー!
先生、………美奈が。………死亡確認をお願いします」
医師は、ご主人がどんな理由でこんな奇妙な行動を取ったのかは別として、
何がしたかったのかは、なんとなく察すると思います。
「………ご主人、それは出来ない相談です」
後から事情を知った親類等から、大ひんしゅく買うこと間違いなしです。



作り話とはいえ、人の死を茶化して書くのはどうかとも思いましたが、
子供の加算額を含めると、月額で10万円以上支給される遺族基礎年金です。
せめて法律の施行日、平成26年4月1日であって欲しいと願うのも無理はありません。

わずか1日の違いで受給できなくなる年金って結構あるんです。

中高齢の寡婦加算は夫の死亡時に奥さんが40歳以上であることが求められます。
40歳以上かどうかで、月額5万円近くをもらえるかどうかが決定されます。

未亡人となった奥さんが20歳代か30歳以上かの違いで、
遺族厚生年金が5年のみの支給になるか、生涯の支給になるかの違いになります。

妻が亡くなった場合の夫に対する遺族厚生年金ですが、
妻の死亡時、夫の年齢は55歳以上であることが求められます。
長い間看護婦として頑張ってきた奥さんが、自分が54歳の時に亡くなってしまえば、
奥さんが長年掛けてきた厚生年金の保険料はまったくの無駄になります。

人の死は突然やってくるもので、都合よくコントロールは出来ません。
愛する伴侶を亡くしたばかりの頃は、そんなお金のことなんか考えもしませんが、
でもようやく気持ちが落ち着いた頃、
1日の違いで本来もらえるはずだった年金が、もらえない事実を知ったら、
さもしいことかもしれませんが、なんとなく納得できないのではないでしょうか。

しかし、逆のパターンも考えられます。
「奥さん、亡くなったって聞きました。まだお若いのに。本当にご愁傷様です」
「はい、平成26年4月1日に息を引き取りました。でも、ラッキーだったんです。
私も後で知ったんですけどね、もし妻が1日前の3月31日に死んでたら、一銭も年金が」
満面の笑顔で、滅茶苦茶はしゃいで語り出したら、これまた大ひんしゅくです。
posted by 貞吉 at 20:30| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年06月25日

刑事の職務質問

「なんで、そんなことまで聞かれなくてはいけないんですか?」
「そんな個人的なことまで答えなければいけないんですか?」
私、裁判の経験はありませんが、
裁判官から、質問の意図はこれこれこうです。
答えによっては刑罰の重さに影響を及ぼしますとかキッパリ言われたら、
それはもう、聞かれたことに対し答えざるをえないと思うんです。
裁判ではなく、たとえば医師からの問診とか、生活保護の申請相談とか、
微妙な立場関係での「なんでそんなことまで?」と思う場面では、
質問に対して、そのたびに「質問の意図」を確認された方がいいと思います。



50歳がらみの刑事が木造2階建てアパートの階段を上がっていきます。
ピンポン、ピンポン。

「はい、どちら様ですか?」
「浦成署の者です」
「………はい? ………今、ドアを開けます」

ドアは、不安な気持ちの表れかゆっくりと開けられます。
そこに立っているのは、20歳代と思われる色白の女性です。刑事は、
女性の顔から、つま先まで、全身をなめるように眺めながら刑事であることを示します。

「奥さんですよね。驚かれないで聞いてください。
ご主人が会社で事件を起こしました。横領です。
そこで奥様からちょっとお話を伺わなくてはなりません」
「………横領?」
「ご主人に最近何か変わった様子とか、そんなことを伺いたいのですが」
「あのぉ………それで今、主人は」
「ご主人は、すでに拘留されています」
「主人は、その横領を認めているんですか?」
「それは、これからです。
奥さん、中に入れていただけませんか。ご近所の目もあるでしょうし」
「………どうぞ」

刑事を部屋に上げ、うろたえながらも奥さんはお茶の準備にかかります。
お茶を入れながら顔を刑事に向け、
「それで、主人はどれほどのお金を横領したと?」
「それも、これからです。奥さん、お茶は結構ですから、こちらによろしいですか」

お茶を出してから、ようやく刑事の前に座ります。
「で、どうでしょうか。最近、ご主人に変わった点というのは」
「………変わった点ですか。警察の方に申しあげるような変わった点というのは特に」
「警察に言う必要はないと思うけれど変わった点、というのはあるんでしょうか?」
「さぁ、どうなんでしょう。事件には全く関係ないと思いますので」
「………奥さん。 私は別に夜の営みの回数が増えたとか減ったとか、
そういうことをお尋ねしたいわけではないんです。
警察はそこまで個人のプライバシーには触れません。
で、なんですか? その変わった点というのは?」
「前まではお豆腐に醤油をかけていたんですが、最近はポン酢をかけるように」
「………奥さん。私の方から質問させていただきます、例えばギャンブルですが」
「ギャンブルは昔も今もやってません。賭け事は好きじゃないと言ってます」
「そうですか。じゃあ、休みの日に頻繁に1人で外出するようになったとか、
飲んで遅く帰ることが多くなったとか、金遣いが荒くなった、そういったことは?」
「いえ、そうしたことも一切ないです」
「そうですか。となると、やはり奥さんに隠れて女関係か」
「………はい?」
「いえいえ、こちらの話です。 ちょっと失礼しますよ」
すくっと立ち上がり、奥さんの許可を待たずに部屋の中を物色し始めます。
タンスの引き出しを下から開け、中を調べたりします。
「失礼ですが、これは奥さんのですか」
オレンジ色のブラジャーを指でつまみ、軽く差し出します。
「ええ。………そうですけど」
「お子さんは、まだいらっしゃらないんですよね」
「はい」
「作らないんですか、それとも子宝に恵まれないとか」
「欲しいのは欲しいんですが、経済的にまだちょっと自信がないので」
「でも、避妊していませんよね」
「否認してないって ………主人は認めたということですか」
「いやいや、そうはなくて、タンスの中にコンドームが見つからないので、
避妊はしてないんでしょうと申し上げただけです」
当たり前ですが、奥さんは返事をしません。
「それとも、コンドームの保管場所は別の所とかですか?」
これについても、奥さんは返事をしません。

「奥さん、私、個人的な趣味でこんな質問をしているわけではないんです。
じゃあ、ずばり伺います。 ご主人の女性関係はどうでしょう?
ご主人に浮気癖があるとか、そういったことはないですか?」
「浮気するほどのお金は持ち合わせていないはずです」
「………もし、お金を持っていたらどうなんですかね。まぁ、いいです。
ご主人とはどちらの部屋で寝ていらっしゃいますか?」
「寝ている場所ですか?」
「そうです」
「そこの部屋ですけど」
「そこでですか。ご主人は、奥さんとご一緒に寝られるわけですよね」
「………ええ、まぁ」
「ざっくばらんに伺います。
夜の営みの回数はどうでしょう。大幅に増えたとか減ったとかないですか?」
「………はぁ? ………大幅に、ですか?」
「いえ、大幅でなく、小幅でも結構です」
「………いや、特にそういったことは」
「どうでしょう、週に3回か、4回。そんなところですか?」
「そんなことまで答えなくてはいけないんでしょうか」
「奥さんは認めたくはないかもしれませんが、私は女性絡みだと思ってるんです。
もし、ご主人が他の女性と付き合っているとなると、当然、回数は減りますよね」
「変わらないです。今も昔も」
「週に3回か、4回ということでいいんですかね」
「回数は関係ないじゃないですか。今も昔も変わらないと私は言いました」
「う〜ん、それは奥さんの考えであって、捜査からは回数も重要なポイントなんです。
今も昔も週に1回であれば、それは参考になりませんけれど、
でも、今も昔も毎日やってますとなれば、女性関係はないのかなとなるわけです」
「………毎日です。今も昔も」
「ほほぉ、毎日ですか。奥さん、きめ細やかで透き通るような色白な肌ですからな。
いやぁ〜、それはそれはお盛んなことで、結構なことです。
改めて伺いますが、それは本当のことですか? 私が言ったからでは」
「毎日です。毎日、毎日、主人は私を求めて愛してくれています」
「そうですか、羨ましい。それはやはり就寝、床についてからですかね?」
「はぁ? 何を聞かれているのか、よく分からないんですけど」
「たとえば、ご主人が帰ってきて、台所で料理する奥さんの後ろから抱きつき、
スカートをまくりあげて、パンティーをゆっくり下して、始めだすとか」
「………………」
「いやいや、これは普段とはちょっと違った行動といいますか、
男という生き物は、やましい気持ちがあると、それを隠すような行動を取るんです。
おまえのことをこんなに愛しているんだよみたいな、ことさらそんな行動です」
「………たまに、そういう日もありますけど、最近に限ったことではないですから」
「おっ、そういう日もあるんですか。そうですか。奥さんは抵抗とかしないんですか」
「しません。素直に応じています。夫婦ですから」
「よくできた奥様でいらっしゃる。じゃあ道具とか使われても文句は言わんのですか」
「なんですか? 道具って」
「こう、クネクネするやつとか、ブルブルブルブルって小刻みに震えるやつとか」
「………それは、なんのために聞かれているんでしょうか」
「………いやぁ、奥さんがいやがるので、他の女性に試してみたくなったとか」
「そういったものは見せられたことも使ったこともありません」
「分かりました。体位は、もっぱら正常位ですか」
「なんなんですか、さっきから。どうでもいいじゃないですか、そんなこと」
「いやいや失礼。上に乗っかられらたら魅力的だななんて思ったものですから。
答えたくなかったらいいんです、この質問は。
妙なことを聞いてくると思われたことでしょう。大変失礼いたしました。
えー、話を戻させていただきます。 コンドームはどこに?」
「………………」
「ご主人の精子の量が前より少なくなったと感じるとか」
「分かりません。そんなこと」
「そうですか。
私の携帯の番号をここに書いておきますので、
ご主人の様子、取り調べの状況を知りたくなったら電話をください。
あと、何か思い出したとか、不安でしょうがないとか、寂しくてしょうがないとか、
なんでも結構です。気軽に電話をいただければ、再度お邪魔しますんで」
そんなメモ紙はいらないとは言えませんので、しぶしぶと受け取ります。

「あとですね、ご近所の方にちょっとご主人のことを伺わせていただきますが、
それは構わんですよね」
「……やはり、主人のその事件のことを伝えてしまうんですか?」
「いえいえそんな、奥さん。捜査上の秘密、個人情報の保護がありますから、
必要もなくペラペラしゃべるようなことは一切ありません。どうか、ご安心ください」
「そうですか。捜査に必要だと言われるのなら、しょうがないです。どうぞ」


刑事の声が1階から聞こえてきます。
「失礼します。真上に住んでる203号室のご主人について伺いたいのですが、
いえ、そんな殺人だなんて大それた事件ではないです。単なる横領です。
会社の金をつまむという、よくある話です。
女性関係だろうと睨んでるんですが、奥さんいわく、毎晩やってるらしいんです。
何をって、夫婦の営みですよ。毎晩って普通、有り得んでしょう。
刑事としては1つでも嘘があるなら、総てを疑ってかからんといかんわけです。
そこでなんです。どうですか、真下に住んでいて分かりますか?
2階から喘ぎ声が聞こえてくるとか、激しい物音がしてくるとか、
こんなこと当事者の奥さんに、しつこく聞けないでしょう。だから、伺っているんです」


こんな刑事はいないと思います。いないと信じたいです、
ですが、ひょっとしたら、いるかもしれない。それが現実の世の中です。
聞かれたら、答えなければいけないのでしょうか。 ならば対応策は?
ご主人に横領で捕まらないように強く言っておく、それぐらいでしょうか。
posted by 貞吉 at 00:26| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年06月18日

本当の寿命

医師から癌を告知され、余命は半年ほどと伝えられる。
誰だって、少なくとも、1週間くらいはへこむことでしょう。
しかしテレビで紹介された女性は強かった。
ある日、ご主人にこう言いました。
「私、あと半年しか生きられない、そんな風には思わないことにする。
私は、あと半年も生きられる。そう、私はあと半年も生きることができるのよ。
それが私の寿命なら、残りを精一杯、生き切って見せるわ」
妻の健気で前向きな意見を聞かされたご主人は後日、妻に言います。
「………おまえ、個展を開くことにすれば?」
「私の描いた絵?」
「たくさん描いてきたじゃないか。
癌を利用するわけじゃないけど、癌のことを包み隠さず報告して招待状を送れば、
友達とか親戚とか、皆、見に来てくれるんじゃないか」
「でも、個展だなんて、人に見てもらえるような絵はないと思うけど」
「いいんだよ、上手くなくたって。私は生きてきましたという証を見てもらえれば」
「………そうね。たとえ誰も来なくたって、とりあえず目標はできるわね」
「そうだよ。来てくれなかったとしても、がっかりする必要なんかないさ。
ぼんやりと寿命が尽きるのを待つおまえの姿なんて見たくないし、
活き活きとした元のおまえの姿に戻れるのなら、それでいいじゃないか」

その後、絵を描いているときはもちろん、キッチンに立っているときも、
食事をしているときも、掃除をしているときも、庭の花の手入れをしているときも、
日々を、活き活きと笑顔を見せて過ごします。

「だいぶ作品がたまったわよ」
「そうか、良かったじゃないか」
「なんだかすいすい、今まで筆が止まっていた中途半端な作品が完成していくの」
「へぇー、そりゃあすごいね」
「癌を知らされてからの私、今の作品も、どんどん描いていくからね。
なんだか分からないけど、すごく創作意欲が湧くのよ。神様のおかげかな」
「おいおい、あまり無理するなよ。
あっ、そうそう。個展を開く場所、決めてきたぞ。
自由が丘の駅の近く。9月だからな、それまでしっかり元気でいろよ」

絶望と向き合いながらも、残された自分の寿命をまっとうしていた或る日。

「ちょっと、絵の具を買いに出かけてくるわね」
「あぁ分かった。気を付けてな。あっ、コンビニでコーラ買ってきてくんないか」
「分かった。コーラね。サンドイッチとか食べ物はいいの?」
「いや、いい。コーラだけで」

車で出かける奥さん。
途中、センターラインをはみ出してきた対向車に正面衝突され、あえなく即死。


途中から作り話ですが、
こんなに悲しくて、むごい運命も、世の中では現実に起こってることなんでしょうね。
自分の寿命だからしょうがないと、勇気をもって受け入れた人に対し、
「何を勝手なこと言ってんだよ。おまえの寿命が半年だなんて誰が決めたんだよ。
癌の告知を受けたあの日時点で、おまえの寿命は後、3ヶ月だったの。
これは、おまえが生まれた時から決まってたんだよ」

安全祈願をと、神社に行ってお賽銭を投じた後の帰路で事故死とか、
神様というのは、融通がきかないというか、事務的に処理される方なんでしょうか。
むごすぎます。
posted by 貞吉 at 20:12| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする