2013年08月06日

これとおんなじヤツ

「出かけるなら、ちょっと買い物の頼まれごとをしてくれないかな」
見つからないように、こっそり出かけようとしたのですが、
玄関を静かに開けているところを、父親に見つかってしまいました。
何か頼みごとをしてきそうだな、そんな雰囲気を、私は察していたのです。

「ちょっと待ってくれ。今、部屋から持ってくるから」

買い物は、“これとおんなじヤツを買ってきてくれ”パターンだと知らされます。
イヤなんです、“これと同じ物”パターン。 
母親にしても同様なのですが、説明するのが面倒なのか、
説明のしようがないと思っているのか、現物を手渡してくるのです。
サラダ油の空きボトル、天ぷら粉の空き袋、仏壇用線香の空き箱、きれた蛍光管。
私は子供じゃないので、売り場まで持ち込みません。
必要があれば、商品名あるいはポイントをメモってから売り場に向かいます。

父親が部屋から何を持ってくるのか、不安な気持ちで待ちます。
以前のことですが、バケツを持ち出してきて、これに合うフタを探してきて欲しいと、
頼まれたことがあります。
バケツを私に渡そうとするので、
「直径とか計れば、なにもバケツを持っていかなくても買ってこれますから」
「いや、そんな面倒なことするより、これを持っていったほうが早いんだ」
メジャーを探し、自分で直径を測り、バケツを突っ返してやったこともあります。

ただ、表彰状の時はまいりました。
町内会で表彰する者が複数人いて、表彰状が3枚足りない。
他の者と柄模様や色が違うとおかしいので、
これと全く同じ表彰状を買ってきて欲しいと手渡されたのです。
全員、新しく買ってきたもので統一すれば、と提案したのですが、
「去年と柄や色が違うのはおかしいべ」と、譲らなかったのです。
おかげで、子どものお使いみたいに、表彰状を店の人に渡して、
「………これとおんなじヤツをください」と言わざるを得ませんでした。
何故、去年と柄や色が違うとおかしいのか。
いつも思うのですが、説得してくる父親の言葉って、意味が分かりません。


さて、父親が部屋から戻ってきます。手には縄を持っています。
「これと同じ太さの縄を買ってきて欲しいんだ」
3周くらい残っている輪っか状の縄を私に手渡してきたのです。 
「分かりました。でも、縄はそんなに要らないです。端っこを5cmほど切ってくれれば」
「いや、万一のことあったらアレだから、全部持っていっていいよ」
何を言ってるんだかサッパリ分かりません。
縄を買いに行って、万一のことなんてあってたまるか!
そう思ったのですが、何を言っても無駄なので、黙って差し出された縄を受け取ります。

「その縄、ダイユーエイトに行かないと売ってないんだ。
だから悪いけど、ダイユーエイトまで頼むよ」
「そうですか、ダイユーエイトですね」
ふてくされた言い方をしたんですが、父親は気が付いてくれたでしょうか。
しかし、あなたがダイユーエイトで買ってきただけのことで、
こんな荒縄くらい、ダイユーエイトじゃなくてもどこでも売ってるでしょう。
ともかく、出かけようとすると、
「あっ、ちょっと待った。
もし、ダイユーエイトに行くんだったら。もう一つお願いしていいかな」
自分から、ダイユーエイトに行ってくれと言っておきながら、
もし、ダイユーエイトに行くんだったら、っておかしくないですか?
しかし、考えてみれば父親らしい、いつもながらの言い回しです。
また、そそくさと部屋に行き、何かを持ってきました。
「これの先っぽだけ売ってないかな。ちょっと探してみてくれないか」
ラジオのアンテナの先の白いゴム部分らしいです。必要ないでしょう、そんなもん。
「いえ、売ってませんから」
「いや、あったらで構わないよ、もしあったら買ってきてほしいんだ」
「………………そうですか。じゃあ、あったら買ってきます」
もう、どうでもいいけれど、早く出かけさせてくれ、そんな気分でした。
「持って行かなくて大丈夫かい。持って行っていいよ」
ラジオを付きだされたとき、反射的に父親の胸グラを掴みそうになってしまいました。

おそらくですが、悪気がないと思えるからこそ、余計にタチが悪いんです。
posted by 貞吉 at 20:23| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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