2008年08月19日

ホームベース

同点タイムリーを打たれた直後、キャッチャーが審判に、
「タイムいいですか」
タイムが認められ、キャッチャーはピッチャーのところに駆け寄ります。


「なぁ、今のホームイン。あいつホームベース踏んでたか?」
「俺も思ってた。ベースを踏まずに、またいだような気がするんだよな」
「そうだよな。………こういう場合どうするんだ。 審判に言えばいいのか?」
「いや、確か審判に言っても答えてくれなかったんじゃなかったか?」
「そうだったよな。俺も何かで見たような気がするんだ。
確か、審判はベースを踏み忘れたのを見て知っていたとしても、
そのことを相手チームに教えてはならない、そんなルールだったよな」
(※ 教えはしないけど、アピールしてきたら、ちゃんと答えてくれます)
「そう、そう。それ」
「もし次のプレーに移ったら、自動的に今の得点が確定しちゃうんだったよな」
「そうだった」
「………じゃあ、どうすればいいんだよ」
「タッチプレーになるわけだから………おまえ、今からタッチしに行ってこいよ」
「………俺が?」
「そりゃあそうだろう、おまえキャッチャーなんだから」
「タッチしにって、もう、あいつはベンチの中に戻っちまったんだぞ」
「そんなことは分かってるよ」
「………俺、1人でボール握って、すたこら敵のベンチに走って行くのか?」
「2人で行くのは変だろう」
「でも………………なんか、おかしくね?」
「おかしくたって、しょうがねぇだろう」
「でも言っておくけど、今って、タイムの最中だからな」
「じゃあ、おまえがこのボールを持ったままいつも通りに座って構えろ。
審判がプレーって行ったら、すぐ立ち上がってボールを持って相手ベンチに走れ」
「………………」
「それっきゃ、ねぇだろう」
「………………おかしくね?」
「だって、プレーと宣言された後、俺がボールをおまえに投げたら、
その時点で、次のプレーに移ったことになっちゃうんだぞ。
そうなったら、おまえが敵のベンチに行ったところで、どうにもならないわけだ」
「………………まぁ、確かにそうだけど」
「なっ、頼んだぞ。 ほれ、ボール」


何も知らない審判が、定位置に戻った選手を確認しタイムをときます。
「プレー」

その瞬間、キャッチャーは素早く立ち上がり、
ボールを握りしめ、相手ベンチをめがけ、すさまじい勢いで走りだす。
しかし、先ほどホームインした相手選手をベンチの中で見つけることができない。
そんな時、ベンチの奥からダーッと飛び出してくる相手選手。

「………俺、さっき、ちゃんとベース踏んでたよな」
こっちはこっちで少し不安な気持ちでいたわけです。
このまま、早く次のプレーに移ってくれと願っていたら、
相手のキャッチャーがボールを握って、こっちに走って来た。
これは、まずいと慌ててベンチの奥に隠れたわけです。


飛び出した相手選手に気が付き、キャッチャーがすぐさま追いかける。
その光景を見たピッチャーがホームベースに駆けつけ、ボールを寄こせと叫ぶ。
キャッチャーがホームベース上にいるピッチャーにボールを投げる。
相手選手は慌ててヘッドスライディングを試みる。
しかし、その指はわずかにホームベースまでは届かず、
ホームベース上のピッチャーが審判の顔を見ながら再度、タッチ。
タッチした後のグラブが高々と上げられる。


「………………君たちは何をやってるのかな」
審判があきれた顔で言うと、ピッチャーは毅然として、
「今、タッチしましたけど」
「あぁ、彼ならちゃんとホームベースを踏んでたよ。
ベースタッチは審判の基本中の基本だから。ちゃんと見てた。
彼はホームベースの端っこだったけど、ちゃんと踏んでた」


大差がついているのに諦めず、ひたむきにプレーを続ける球児たち。
決勝戦は17対0。 それでも、一生懸命プレーを続ける彼らを見ていて思いました。
「相手ピッチャーは良すぎる。点を取って追いつくのは無理だ。 笑いを取ろう」
大阪桐蔭が逆に常葉菊川に17点リードされていたら、何かやってくれたと思います。
長い大会の歴史の中、甲子園で大観衆から笑いを取った。
そんなドラマがあってもいいんじゃないかと。
posted by 貞吉 at 22:29| Comment(2) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ありそうな話です!!
マウンド上で集まった時に何を話しているのか…
想像すると楽しいですよね。

ってか、「ここまできたら笑いを取ってやろうぜ」なんて粋な心意気の選手のいるチームは 負けませんって!!(笑)
Posted by ひまわり at 2008年08月20日 21:33
でも、熱い気持ちで笑いを取ろうとするとハズしますよ。(体験済み)
軽い気持ちで、周りのノリに合わせないとハズします。(体験済み)
声援は一斉に消え、タイコやラッパは鳴り止み、シーンとドン引きの甲子園。
それはそれでドラマです。 (タイコやラッパ………実にいいフレーズだ)
Posted by Toひまわり 貞吉 at 2008年08月21日 23:16
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