2013年04月18日

ストーブの筒

「お母さん、ストーブの筒ないですかね。
なんだかふとんが湿っぽくて。乾燥させるのに使いたいんです」

ストーブの筒とは、東北地方では多くの家庭で使っていると思いますが、
ファンヒーターの排熱口の近くににセットし、温風をこたつに引き込むという円筒です。

春になり、すでにどこかに片付けられてしまったようでした。

「お母さんたちのストーブ使っていいわよ」
「いえ、ストーブじゃなくて、筒です。筒。ストーブの噴出し口に付ける筒」
「何時間も使うわけじゃないんでしょう。いいわよ持っていって」
「………で、その筒はどこにあるんですか? 筒ですけど。筒」
「お母さんたちの部屋にあるけど、どんなストーブでもいいんでしょう?」
「ストーブはいりません。欲しいのは筒です。筒。筒が欲しいんです」
「えっ? あぁ、筒ね。筒のことね。私はでっきりストーブかと思ったわよ」
ここで、隣の部屋にいた父親がわざわざこちらの部屋にやってきて言います。
「父さんもストーブって聞こえたよ」
まったく2人してこいつらは、と私は思ったわけです。

譲って、最初の私の言い方が悪かったのかもしれません。
「ストーブの筒ないですかね」が、「ストーブないですかね」と、
聞こえてしまうような、そんな発声だったかもしれません。
だとしてもです。その後に私は“筒”という言葉を連発したじゃないですか。
あなたたちはいつだってそうです。
1度こうだと思い込むと、訂正することができません。
思い込んでしまったら、もう聞こえない、あるいは聞く気がない。

「筒なら筒で、最初にちゃんと言ってくれないと分からないわよ」
母親が言ったのですが、改めて、最初が全てなんだなと学んだわけです。

ここで、再度、父親が口をはさんできます。
「あんたが欲しいのはストーブじゃなくて、筒だべ。筒のことを言いたいんだべ」
“言いたいんだべ”って、もう言いたくなくなるくらい筒って何度も言い続けました。
さも、したり顔で、“あなたが言いたかったことは、こういうことではないのかな?”
まったくもって、何を今さらです。


「そうですね。おっしゃる通りです。
私の言い方がまずかったのだと思います。
それはそれで今後、悔い改めることとさせていただきます。
ところで、話を戻させていただきますが、
私にストーブではなくて、筒という物をお貸しいただけないでしょうか」

「ないわよ。穴が開いたので捨てちゃった」

無駄に過ごした時間を返して欲しい。
posted by 貞吉 at 20:32| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする